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2006年5月16日 (火)

クイーンとハードボイルド

連載中のメルマガ執筆のためにエラリー・クイーンを読んでいて、「おやっ!」という文章にぶつかりました。

「ブロードウェイにはハードボイルドと称する連中がうじゃうじゃしてますが」

これは1933年作の「アメリカ銃の秘密」(早川文庫版)の57ページにあります。訳は大庭忠男氏です。クイーン自らが解説文ではなく、作品の中で「ハードボイルド」という言葉を1933年の時点で使っていたのかと驚いた次第です。この言葉が1933年にはすでに市民権を得て、会話の中で使われるようになっていたことを意味しているからです。

所が、井上勇氏の創元文庫版では51ページでこう訳しているのです。

「ブロードウェイは、気むずかしいといおうか、なんといおうか、そんな連中でいっぱいだけれど」

これでは大庭氏が勝手に「ハードボイルド」という言葉を持ち出して来た可能性も考えられるわけです。確認のためには原文を読む必要があるわけですが、現在、エラリー・クイーンの作品は日本では簡単には手に入りません。

結論が出ないまま読み進めると、早川文庫版の213ページでこういう文章がありました。

「ニュース・カメラマンってやつは、新聞記者より10倍もハードボイルドなんです。」

そこで、また創元文庫版を見てみると、209ページにこういう文章がありました。

「ニュース映画のカメラマンは新聞記者よりも、およそ千パーセント以上、ハード・ボイルドだ。」

二人の訳者が同じように訳しているので、原文でも使っていると思っていいでしょう。最初の文では井上氏の方が意訳したのだと私は思います。

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