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2005年11月19日 (土)

ウールリッチの自伝14

 ウールリッチの自伝は未完のまま出版されていますが、、編集者は彼の残された文書の中から、ウールリッチが自伝の「ENDING]用に書いたと思われる文章を「補遺」として提供しています。ネヴィンズは伝記(日本語版のタイトルは「コーネル・ウールリッチの生涯」)の中で、その文章を使っています。ウールリッチの死を語る場面です。日本語版の下巻の231ページにある以下の文章がそうです。私とは違う解釈の部分がありますが、門野集氏の訳をそのまま引用します。出版社は早川書房です。

 「私は死を欺こうとしてきたのだ。いつの日か、暗闇が襲いかかり、私を消し去ってしまうことはわかっていた。私はた だしばらくのあいだ、それを乗り越えようとしていたのだ。死んでしまったあとも、ほんの少しだけ長く生き続けようとしたのだ。この世を去ったあとも、光のなかにとどまり、あとはほんの少しだけ生者とともにいたかった。」

 私はネヴィンズのこの伝記の英語版つまり、原作に目を通していませんので、ここから先は推測になりますが、門野氏が原文をすべて訳したとするなら、ネヴィンズはウールリッチの文章の最後の1行を削除したことになります。実はウールリッチの文章には最後に以下の文章があります。

 「I loved them both so.A Fool and his machine. Yes,a fool and his machine.」

 この文章の「machine」の意味が分からないのです。この10日ほど、この文章を睨んでいるのですが、私には解釈不能です。ひょっとすると、ネヴィンズも意味不明なので切り捨てたのかも知れません。どなたか教えて下さい。

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2005年11月13日 (日)

ウールリッチの自伝13

 ウールリッチの自伝を読み終えての最初の感想は、ラストが中途半端だなということを前回書いたのですが、編集者による巻末の補遺にその答えがありました。

 それによると、やはり未完成だったというのです。おまけに失われた章もあるようです。失われたことが何故分かったかと言うと、別のノートに概要が残っていたからです。その内容は「失敗した結婚」についてのようです。何故、その章がなくなってしまったのかは書かれていませんので詳しい事情は分かりませんが、彼の人生の中でも最も謎の多い部分だけに惜しまれます。

 また、この自伝のエンデイングについても断片が残っているようです。その内容は次回にご紹介します。

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2005年11月 5日 (土)

ウールリッチの自伝12

 ウールリッチの自伝の第5章(最終章)は「競馬好きなメイド」という奇妙な題がつけられています。ウールリッチがシカゴのルーズヴェルト・ホテルにしばらく滞在した時のエピソードです。

 彼の部屋を掃除しているメイドはどうみても60才を過ぎている女性でした。彼女はウールリッチに仕事は何をしているのかと訊ねます。すると、彼はWriter(作家)だと答えたのに、彼女はRider(騎手)と聞き違えてしまいます。彼はニューヨークなまりがあり、シカゴとは少し違うアクセントだったせいでしょう。しかし、彼は彼女の勘違い.を正そうとはしないのです。なぜなら彼は自分が騎手に間違われたことを喜んでいるからです。自分は書くという行為に男らしさを感じて来なかったと告白しています。もっと行動的で、他人と競い合うような職業に憧れを抱いていたと言うのです。

 誤解を解かないままなので、彼女との会話はその延長上で行われるわけです。彼女は騎手なら色々な内部情報を知っているだろうから、どの馬が勝ちそうか教えてくれと言い出すのです。彼は思っても見なかったことを言い出されて困るわけですが、今更違うとも言えずに適当なことを言って誤魔化すのです。

 所が、その予想が当たってしまい、今度は別のメイドが彼の部屋の担当者として現れるのです。前のメイドから話を聞いて自分も勝ち馬を教えて貰おうと思っているからです。彼の方はまぐれが二度も続くはずがないと分かっているので、メイドが損をするようなことは出来ないと頭を抱えてしまいます。悩んだあげくに彼が選んだのは逃げ出すということでした。

 予定を早めてチェックアウトしているその時に、そのメイドが遠くで彼を見ていたのです。勿論、何も言いません。が、その恨めしげな視線に彼は気が咎めて落ち込むのです。去り際にタクシーの後ろの窓から入口を見たのですが、そこには誰もいませんでした。それがこの作品のラストの文章なのです。気の弱い男が自ら招いたトラブルを逃げ出すことでしか解決出来ない有様をオー・ヘンリーのような短編に仕上げていて、それはそれで面白いのですが、自伝のラストとしては中途半端な思いがします。

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